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ストレスチェックが50人未満の企業にも義務化される方針が決定
2025年7月17日
コラム

ストレスチェックが50人未満の企業にも義務化される方針が決定

義務化の背景には、メンタルヘルス不調者の増加がある

2025年3月14日、労働安全衛生法の改正案が閣議決定され、これまでストレスチェックが努力義務とされていた従業員50人未満の事業場においても義務化される方針が決まりました。背景には、精神障害による労災請求件数がこの10年で約2倍に増加していること、ストレスチェック実施割合が義務である50人以上の事業場に比べ、50人未満では5割近くも低いことがあるようです。

ストレスチェックの効果

実際、ストレスチェックに効果はあるのでしょうか。厚労省の委託研究や調査事業では、ストレスチェックを受検した労働者の約5割が自身のストレスを意識するようになったことや、ストレスケアマネジメントのヒントをもらったことを、ストレスチェックの効果や有用性として認識しているとのデータがあります。また、ストレスチェックに加えて、集団分析と職場環境改善の取り組みにより、ストレス反応や生産性が改善したとの報告もあります。したがって、ストレスチェックは、自身のストレス状態への気付きをもたらし、ストレスの低減や生産性向上に資するといえるでしょう。自身のストレス状態を知ることは労働者にとって重要であり、事業場規模に関わらず、全ての労働者がその機会を得られるようにすべきと考えられます。

現行のストレスチェック制度は50人以上の事業場での実施を想定したもの

ストレスチェック制度では、まず実施前に事業者がストレスチェックに関する基本方針の表明、衛生委員会での調査・審議、労働者への説明・情報提供を行います。続いて、事業場から選任された実施者(産業医が推奨)が主体となり、ストレスチェックを実施します。実施後は、実施者による面接指導の要否の確認、労働者個人への結果通知、面接指導の申出の勧奨、申出のあった労働者に対する医師による面接指導、医師からの意見聴取・就業上の措置の実施、職場環境改善のための集団分析(努力義務)等を行います。
50人未満の小規模な企業では、体制や資源が十分でないこともあり、衛生委員会の設置や産業医の選任が任意です。現行の手順では、衛生委員会や産業医の存在が前提となっており、50人未満の事業場の実態に即したものとなっていません。

50人未満の企業には、外部機関への委託が推奨

「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 中間とりまとめ」(2024年11月1日)によると、50人未満の事業場では、プライバシー保護の観点から、ストレスチェックの実施を外部委託することが推奨されています。小規模な事業場では、産業医がおらず、情報を適切に管理できない懸念があるからです。他方、平成30年に改正された労働安全衛生法では、労働者の健康情報の適正な取り扱いについて規定が設けられ、外部機関の活用により、プライバシー保護への対応が一定程度可能になってきています。コスト面でも、50人未満の事業場のストレスチェック実施費用は数百円~千円程度(一人当たり)、面接指導は2万円程度(一人当たり)と、そこまで高額ではありません。実際、ストレスチェックを外部委託している事業場は全体で7割を超えており、外部委託が標準になってきています。

今後の動向

前述の通り、現状のストレスチェック制度は50人未満の小規模な事業場に即していないため、現実的で実効性のあるマニュアルの必要性が認識されています。具体的には、職場の人間関係への配慮、関係労働者の意見を聴く方法、集団分析ができない小規模な集団の場合の職場環境改善、地域保健産業センター等の支援活用などのポイントが盛り込まれる方向性です。また、外部委託する場合のチェックリストの見直しや、ストレスチェック結果の監督署への報告義務も、負担軽減のため課されない見込みです。
このように、50人未満の小規模な事業場の状況に配慮しているものの、詳細は検討前の段階です。義務化時期も未定であり、経営者や担当者は不安に思うところがあるかもしれません。そこで、まずは情報収集から始めるとよいでしょう。例えば、厚労省ではWEBサイト「こころの耳」でメンタルヘルスケアに関するさまざまな情報を載せています。また、産業保健総合支援センターは無料で相談を受け付けていますし、ストレスチェックサービスを提供している外部機関に、話を聞いてみるのもいいかもしれません。

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