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回答方法は「記名式」か「匿名式」か? ~企業内アンケート実施の現場から~
2025年10月29日
コラム

回答方法は「記名式」か「匿名式」か? ~企業内アンケート実施の現場から~

企業内で実施する従業員満足度調査やコンプライアンス意識調査などでは、「記名式」と「匿名式」のどちらでアンケートを実施すべきか、よくご質問をいただきます。弊社の経験をもとに、それぞれの特徴やメリット・デメリット、注意点をご紹介しつつ、適した運用方法について解説いたします。

弊社のアンケート実施の現状

弊社がこれまで手掛けた企業内アンケートは、ほぼ100%匿名式で実施しています。特に、コンプライアンス違反の調査では、違反の原因が上司に関連している場合が多く、記名式だと回答者が自分の回答内容が会社や上司に知られ、不利益を被るのではないかと恐れるためです。結果として記名式では回答に慎重になり、正確なデータを得にくくなる傾向があります。
匿名式にすることで、回答者は本音を語りやすくなり、調査の信頼性向上につながります。ただし、匿名式でも質問項目の属性(例えば部署・年齢・性別など)によっては、組み合わせから本人が特定されるリスクもあります。弊社ではそのリスクを避けるため、性別や部署など属性情報は必要最低限に抑え、さらに集計結果のみ納品し、生データはお渡ししない形を徹底しています。

記名式アンケートの例外的な利用ケース

記名式は基本的に弊社では推奨していませんが、例外的に活用する場合があります。例えば、匿名アンケートで得られた結果から個別の詳細調査が必要と判断された場合、回答者本人の同意を得たうえで氏名の記入をお願いし、より深い調査を行います。
このようなケースは、法律事務所など第三者機関と連携して進めることが多く、調査自体も弁護士が担当します。記名式で行うことで、個別の問題解決および適切な対応策の策定に役立ちます。

匿名式アンケートの運用パターンと特徴

匿名式アンケートの実施方法として、弊社では主に以下の2パターンがあります。

方法名 共通ID方式 個別ID方式
特徴 メールアドレスを持たない従業員が共有PC等から回答 メールアドレスを持つ従業員が個別PC等から回答
メリット 完全に匿名性が確保される 回答督促が無脳、詳細な属性別分析が可能
デメリット 回答期間中の督促ができない、属性別の深掘り分析が困難 本当に匿名か疑われることがある(会社側に情報が渡る懸念)

共通ID方式は匿名性の担保が最も強固ですが、回答率や分析の面で制約があります。一方、個別ID方式は運用がスムーズで分析しやすいですが、回答者が懸念を持つため信頼確保のための説明や運用体制が重要です。

回答率の傾向について

一般に、記名式アンケートは回答率が匿名式より低い傾向があるとの報告もあります。弊社の経験でも、匿名式に比べて記名式の回答率は若干下がる印象です。調査対象者が安心して回答できる環境づくりが重要であることがうかがえます。

まとめ:適切なアンケート回答方法の選択

まとめると、正確で信頼性の高いデータを得るために、企業内での従業員調査は基本的に匿名式が適しています。記名式は、リスク情報の収集および対応を目的として、社外の第三者機関が調査を担う場合に限定されるべきです。そうでない限り、記名式は従業員の回答を阻害し、調査の効果を損ねるリスクがあります。
アンケート実施の際は、調査の目的や回答者の安心感を最優先に考え、それに最適な方法を選択・運用することが成功の鍵となります。

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